社員リレーブログVol.18 勝手に繋がってしまう!? イオンマイグレーション
1.はじめに
皆様こんにちは。中央電機計器製作所(以下CEW)です。
CEWでは日々様々なモノづくりを行っており、その中で基板製品も多く手掛けています。
せっかくなので今回は、その基板に関する話題をひとつお話ししたいと思います。
基板製品に起こるイオンマイグレーションについて紹介します。
安全で適切なものづくりの為に、このような仕事に関わる皆様のご参考になれば幸いです。
2.プリント基板とは?
皆様は、基板と聞くとどの様なものをイメージしますか?
電子工作などで使われる、同じ大きさの穴が等間隔に並んだものでしょうか?
もちろんそういった基板も利用されますが、ある程度数を作ることが決まっている場合によく用いられるのが、プリント基板です。
プリント基板は大変便利で、一度設計を行えば、同じ回路がプリントされた基板を大量に製造する事ができます。
また、プリント基板は必要な部品を実装(はんだを用いて取り付ける作業)するだけで基板が完成するので、配線作業を省く事ができます。
基板
3.イオンマイグレーション
前述の通り、製作数によっては作業の大幅な効率化が期待できるため、製品を作る際にはよくプリント基板が用いられます。
しかしそのプリント基板に対して起こりうる恐ろしい現象が「イオンマイグレーション」なのです。
イオンマイグレーションとは何かと言うと、「イオン化した陽極の金属が移動して、陰極まで勝手に繋がってしまう現象」の事です。
これがプリント基板でどのように起こるのか気になりますよね。
◎イオンマイグレーションが発生する条件(要素)
まず、イオンマイグレーションが発生してしまう際に揃っている条件(要素)は次の4つです。
A.イオンマイグレーションが起きやすい金属
B.電圧
C.水
D.ある程度狭い電極間隔
これらの条件が揃っていれば起こるため、プリント基板であればどの様なものでも起こるわけではありません。少しだけ安心ですね。
具体的に言うと、「狭い間隔で電極が配置されているプリント基板で(D)、水が付着する可能性のある環境下で(C)、
それなりの大きさの電圧がかかる(B)製品」の場合は起こり得ます。
Aの要素はどこに行ったかといいますと、先の説明に出てきた実装に用いる「はんだ」です。
つまり通常のプリント基板であれば、B,C,Dが満たされれば、イオンマイグレーションが起こる可能性があります。
◎イオンマイグレーションの発生過程
ではこれらの要素が揃った基板上で、イオンマイグレーションがどの様にして起こるか説明します。
①まず、狭い間隔の電極間に水分が付着します。
②そこに大きな電圧がかかる事で、陽極の金属がイオン化し、水に溶けだします。
③水に溶けだした金属イオンはクーロン力により、そのまま陰極の方へどんどん流れていきます。
④陰極にたどり着いた金属イオンが次々と析出し、樹枝状の結晶(デンドライトといいます)となり、陽極に繋がります。
さてこの結果繋がった陽極と陰極はどうなるでしょうか。
ここまで言えばイオンマイグレーションの恐ろしいところをお分かりいただけると思います。
当然、要素にある通り、この陽極と陰極には電圧がかかっているので、それらが繋がるとショートし、機器の破損の原因となります。
余談ですが、はんだ付けに使用されるフラックスに含まれる成分も、イオンマイグレーションを引き起こす手助けをする事があります。
そのため、そういった成分が洗浄されているかいないかによっても、起こりやすさが変わってくるのです。
4.イオンマイグレーションを引き起こさないために
このように機器の故障の原因となりうるイオンマイグレーションですが、金属・電圧・水のどれか一つでも欠けるとまず起こる事はありません。
つまり対策は案外簡単で、水分を防げばいいわけです(そもそも基本的に機器に水分は良くないですよね)。
また、どうしても水分がつく恐れがある環境で、このような基板製品を使用しなければいけないときは、
コーティング剤などで保護をするといった方法などで対策する事も可能な場合があります。
CEWでは実装されている部品に合わせて、コーティング剤を塗る、吹きかけるなど方法を使い分けています。
5.まとめ
今回は基板製品に関する少しだけ専門的な現象についてご紹介させて頂きました。
CEWではこのような専門知識をふまえ、お客様の「欲しい」を叶えるご提案とものづくりを行っております。
また製品をハード・ソフト一貫して設計から製作まで行う事も可能です。
(詳しくはこちら:【CEW製品情報|システム開発】)
もしも、「こういう製品が欲しいけど、どこで作ってくれるのだろう」といったようなお悩みがございましたら、ぜひ弊社にご相談下さい!
関連URL
◆製品情報|CEWの要素技術をご紹介しています。
【要素技術紹介】